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ある高校生の話

試合終了を告げるホイッスルが鳴った。
その場に崩れるように座り込み泣きじゃくる緑色の選手達。
ベンチからは「最後までちゃんとやろう」と、最後の挨拶を促す監督の声。
たぶんそんなことを言っていたと思う。
泣き崩れる子供達を見ながら、後半途中交代の後ベンチに戻らずそのまま応援に加わっていた息子のことを思っていたのでよく憶えていない。
それでも選手達はその場を動こうとしなかった、いや動けなかったのだろうと思う。
俺はそんな子供達をただじっと見ていた。

第86回全国高校サッカー選手権京都府予選は、ベスト16が出揃い10月21日に太陽が丘で4回戦の8試合が行われた。

3回戦で近年2年連続全国出場を果たした強豪校に運良くPK戦で勝った息子達は、ほぼ互角の内容、贔屓目もあるがやや押し気味で前半を戦っていた。

前の試合で押されまくっていた事を思うと、はるかに良い感じの内容に勝利を期待しながら試合を見ていた。

そんな中、ディフェンスの選手が出したパスがプレッシャーをかけに来た相手の選手に渡ってしまい、そこからのミドルシュートが決まってしまった。
あっさりと、ほんとにあっけなく、相手に先取点を奪われた。
そうなると早くも焦りがでるのか少しミスが目立ち始める。でもその後はなんとかイーブンな内容のまま前半を終了。
後半、マイボールを大事にしようとする気持ちからか、無駄にパスを繋いだり持ちすぎたりで、なかなかシュートまで持ち込めない。
そんな状況の中、終了間際にカウンターから追加点を奪われ万事休す。
長いホイッスルとともに3年生の高校サッカーが終わった。

試合後、引き上げてきた選手達から一人離れ、ユニフォームで顔を覆い泣きじゃくる子がいた。

相手の先取点につながるミスをしてしまったディフェンスの選手だった。
「ごめんなさい。ごめんなさい・・・。」
泣き声のなか、何度も何度もそう言っていた。
「ごめんなさい。ほんとごめんなさい。」
何度も、何度も泣きながら謝っていた。

しばらくして、そんな彼に選手達がひとり、またひとりと言葉をかけにやってくる。 「ごめんなさい。ごめんなさい・・・。」 そのたびに彼は謝っている。

彼に何か言葉をかけたかったが、正直なところその言葉が見つからなかった。
そしてそのまま子供達より先に帰宅することになった。

車中、ひとり謝りながら泣いていた彼の話になった。
一緒に応援に来ていた妻と娘は、俺と違うところで試合を見ていた。
ちょっと目を離している間に先取点を奪われたみたいで、どのように点を取られたかも分からなかったらしい。
それくらいのあっという間の出来事だった。
失点の経緯を説明した後、妻が以前その彼の母親に聞いたという話を教えてくれた。

中学生のとき、ある公式戦で彼のミスから決勝点を奪われて負けた試合があったらしい。
責任を感じ、家に帰ってからもずっと泣いていたそうだ。
そして次の公式戦の前日、ミーティングで全選手を前に監督から、前回は彼のミスのせいで負けたと名指しで言われたそうだ。
同じミスを繰り返さないように頑張っていた彼は悔しくて泣いた。
そんな息子が気の毒で、母親は監督のところに文句を言いに行こうかと思ったらしい。

高校サッカー最後の年、それまでレギュラーではなかった彼は練習試合などで結果を出しこの全国予選からレギュラーとして試合に出ていた。
しかしながら、彼にはとても残念な結果で高校サッカーが終わってしまった。

「ごめんなさい。ごめんなさい・・・。」
彼は、泣きながら何度も何度も謝っていた。

「そうか・・・。」
その話を聞いて、それ以上言葉が出なかった。

たかが高校生のサッカー。
地方予選で敗退した学校の一選手、ひとりの高校生の話。

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